Surfvoteイシュー:「高齢者の年齢による定義は必要か」
9月24日:Surfvoteイシュー「高齢者の年齢による定義は必要か」寄稿しました。
最近、65歳以上と定義されることの多い高齢者の年齢を引き上げるべきとの意見が経済界から上がってきています。
一般的に、65歳と認識されている理由は大きく2つあります。
ひとつは、老齢年金(国民年金、厚生年金)の支給開始年齢が65歳の誕生月からであること、そしてもうひとつは企業が定年年齢もしくは再雇用年齢の上限を65歳と定めている場合が多いからという理由です。
また、これに加えて介護保険の第1号被保険者は65歳以上からとなっています。
高齢者を65歳以上と定めた起源
高齢者を65歳と言い始めた起源は19世紀後半に遡ります。
1889年にドイツのビスマルク首相が、世界初の老齢社会保険制度を創設しましたが、当初70歳であった年齢を20世紀初頭に65歳に引き下げたことから、その後同様の年金制度を導入したヨーロッパや世界各国でも65歳という年齢が一般的となったものです。
そうしたことから、現在、世界保険機構(WHO)が、各国の高齢状況(高齢化率)を把握するための指標として、65歳以上という数値を採用していますが、これもあくまでこうした経緯に基づくものでした。
長寿化し、働き続ける高齢者も増加
65歳が高齢者の指標や定年退職の指標として使われ始めた当時、平均寿命は現在よりもかなり低く、退職年齢を65歳に設定することは、当時の平均余命と経済実態に合致しており、理にかなっていたとも言えます。
しかし近年、日本の高齢者の平均寿命は伸び、働き続ける高齢者も増えてきています。
日本の高齢者の平均余命は、男性81.09年、女性87.14年(2024年厚生労働省)で、いずれも世界有数の長寿です。高齢者の就業率も伸びています。65〜69歳の就業率は50.8%、70〜74歳の就業率は33.5%(2022年労働力調査)であり、いずれもこの20年以上伸び続けています。
高齢者の年齢定義の見直し議論
こうした中で、一般的に認識されている65歳という高齢者の定義を変えてはどうかという意見が数年前から出始めてきました。
その口火を切ったのが、日本老年学会・日本老年医学会で2017年3月に「高齢者に関する定義検討WG」が新しい高齢者に関する定義を提言。
長寿で元気な高齢者が増えたことから、65歳以上と言われた高齢者定義を75歳以上とし、65〜74歳は准高齢者としてはどうか、と提唱しました。
そして本年6月、政府が定めた経済財政運営の指針「骨太方針」を巡り、社会保障や財政を長期で持続させるためには高齢者就労の拡大が重要との考えが示されました。また経済同友会の新波剛史代表幹事は7月に、「高齢者の定義は75歳でいい。働きたい人がずっと働ける社会にしたい」と述べています。
人口減少が続く日本社会の中で、平均寿命・就労寿命も伸び、元気な高齢者は、働き続けることで、社会保障の担い手となるべきだ、という論調がそこには見え隠れしています。
また、もしかすると年金支給開始年齢を更に引き上げるべきだという意見も底流にあるのかもしれません。
一方、これらに意見に対して、武見敬三厚生労働大臣は5月28日の記者会見で、定義の見直しを「考えていない」と説明。
年金財政は長期的に安定しているとして、「年金の支給開始年齢の引き上げは考えていない」。
介護保険についても、「直ちにその範囲を見直すことは考えていない」としました。
実際のところ、年金受給については、支給開始は原則65歳ですが、繰り上げ(最短60歳から)繰り下げ(最大75歳まで)となっており、産業界の意思ほどその必然性を感じていないようです。
改めてみなさんにお聞きします。
高齢者の年齢による定義は必要でしょうか?
65歳以上と定義されることの多い高齢者の年齢を引き上げるべきだと考えますか?
参考にした資料
高齢者の定義「70歳でも75歳でもいい」 経済同友会・新浪氏(2024年7月4日、朝日新聞朝刊)
「高齢者は65歳」の定義を維持 厚労相、年金や介護の基準で(2024年5月29日、北海道新聞朝刊)
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