Surfvoteイシュー:「定年による給与引き下げは年齢差別にあたるか?」
2023/11/08 さまざまな政策や課題(イシュー)について知り、自分の考えに基づいて投票(Vote)し、自分の意見や立場を述べ(コメント)、他の人の意見を傾聴し評価することができるサービスSurfvoteにイシュー:「定年による給与引き下げは年齢差別にあたるか?」を寄稿いたしました。記事は<こちら>から
年齢差別(エイジズム)とは
年齢を根拠とする差別や偏見は、「エイジズム」と呼ばれる。
「エイジズム」を最初に提唱したのは、米国立老年研究所長を務めたロバート・バトラー氏で、その背景には、米国社会では、「人は年を取ると思考も運動も鈍くなり、過去に執着して変化を嫌うようになる」といった画一的で否定的な高齢者イメージがあった。
そこで、米国では数回の改訂を経て、1986年に連邦法として年齢を理由に雇用で差別することを禁止する「雇用による年齢差別禁止法」(PDF)が制定され、定年による雇い止め禁止も含まれている。
日本における年齢差別事例
こうした米国の状況に対し、日本では年齢による雇用差別的な事例は今も数多く見られている。
その代表例が定年による雇用終了、定年による雇用形態見直しに伴う賃金水準の引き下げである。
高年齢者雇用安定法は2006年改定で雇用者の65歳までの安定した雇用を義務化、さらに令和3年改訂で、雇用者に対する、
(1)70 歳までの定年の引上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)
の導入を挙げたが、罰則規定がない努力義務のため、なかなか導入は進んでいない。
多くの企業は60歳の定年を機に、雇用形態の変更(正規雇用から短期雇用など)を行い、同時に給与水準の引き下げをおこなっている。
年齢、雇用形態変更に伴う、給与水準の低下は、政府の定めた「同一労働同一賃金ガイドライン」に抵触する恐れもある。
同ガイドラインでは、基本給を決める要素として、働き手の「能力や経験」「業績や成果」「勤続年数」などを挙げ、その性質や実態を明確にして支給することを求めている。
しかし、企業の中には、仕事内容がほとんど変わらないにも関わらず、「再雇用」という名目で処遇を下げる企業も多い。
こうした状況に対して、定年を契機とする給与水準の低下は不当と提訴した名古屋の自動車学校の教員指導員に対する最高裁判決が本年7月になされた。
それは、「基本給が定年退職時の6割を下回るのは不合理」と判決した名古屋高裁に対し、基本給のさまざまな性格をより踏み込んで検討すべきという指摘の差し戻しであったが、いずれにしても単純に給与水準を下げようとする企業に対する一定の警告ともなった。
企業側の論理
企業側にとってみれば、「高年齢者雇用安定法」で65歳までの雇用延長は受け入れざるを得ない。
しかし、人件費は出来るだけ抑制したい、賃金カーブを引き下げたいという意図が働く。
しかしそうした処遇によって、就労意欲をなくしてしまうシニア社員が一定程度存在することも否定できない。