わかりづらい老人ホーム・介護施設の運営実態 サービス内容をどうやって調べれば良い?

老人ホーム・介護施設の運営内容をどうやって調べるか
人生100年時代と言われる中で、病院や老人介護施設の世話にならずに終末期を迎えたいと多くの人が願っています。しかし、実際にはそういうわけには行きません。病気や怪我を契機に病院や老人介護施設のお世話にならざるを得ない機会も増えてきます。また、一人暮らしが困難となり、老人ホームや施設に入居する高齢者の方もおられるでしょう。
老人ホームや介護施設を選ぶ際に、どのような施設・サービスが提供されるのか、費用はどのくらいかかるのか、提供されるサービスの質はどうなのか、などが気になる方も多数いらっしゃるでしょう。
そこで、こうした介護施設の関連情報がどのような形で提供されているのかを整理してみたいと思います。介護施設の検索サイトとしては、大きく①民間による介護施設検索サイト、②公的機関による介護施設検索サイト、③介護施設の第三者評価サイト、に大別することができます。以下、この3つのサイトの概要とメリット・デメリットを整理していきます。
①民間による介護施設検索サイト
グーグルなどで、「老人ホーム」「検索」と入力すれば、最初に出てくるのが、この民間企業が運営する「老人ホーム・介護施設検索サイト」です。代表的な検索サイトとしては、「ライフル介護」「みんなの介護」などがあります。
これらのサイトは、ユーザビリティに優れ、「地域・エリア」「入居一時金・月額料金」「介護度」「施設種別」などの検索条件で、候補となる施設が一覧で表示され、施設詳細も知ることができます。空室状況なども把握することができます。
サイトの利用料は無料で、相談センターに連絡すれば、相談にものってくれますし、おすすめの施設を紹介してくれるなど、至れり尽くせりです。
しかし、これらの検索サイトを利用するに際しては、一定の留意が必要です。
というのは、これらのサイトは、入居者を掲載施設に紹介した場合、一定の紹介料が支払われることで、運営が成り立っています。従って、サイトが推奨する施設は、どちらかといえば、営利を目的とする民間施設(有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)が中心となる傾向が強く、公的性格の強い、社会福祉法人や医療法人が運営する特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、養護老人ホーム、などの施設への紹介はあまり積極的ではないと言えるでしょう。
掲載されている施設のスペックは、居室数、提供サービス内容、スタッフ数、利用金額などは過不足なく掲載されています。一方で、民間の紹介サイトなので、利用者の口コミは口当たりの良いことしか掲載されていません。スタッフの数が充足しているか、また施設内の事故件数など、施設の運営実態が過不足なく公表されているかについては一定の留保が必要となるでしょう。
民間の介護施設検索サイトを利用する際には、掲載情報のみを鵜呑みにするのではなく、実際にきちんと施設を見学することが必要です。
②公的機関による介護施設検索サイト
公的機関による老人ホーム・介護施設検索サイトは、厚生労働省による「介護事業所・生活関連情報検索」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)があります。
このサイトは、全国都道府県別に介護事業所や、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、病院、薬局などが検索できる、いわゆる国による介護福祉情報の検索ポータルサイトと言っていいでしょう。
このサイトでは、入居施設だけでなく、訪問介護や通所介護施設、短期間の宿泊、福祉器具の貸与など、介護全般に関わる事業所や施設の検索が可能となっています。また、地域包括支援センター、認知症に関する相談窓口なども掲載されており、ここが民間の検索サイトと最も異なっているポイントです。
介護施設の情報では、事業所の概要、サービス内容、設備状況、月額利用料、従業員情報などが記載されており、運営状況の評価も「利用者の権利擁護」「サービスの質の確保への取り組み」「相談・苦情への対応」など7つの項目の取り組みが該当県の平均と比較してどうかをレーダーチャートなどで確認することができます。この点は、先の民間サイトと比べて、施設の運営の質を理解する上では参考になると言えるでしょう。(図表1参照)
図表1 運営状況の評価レーダーチャート例出典:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」

ただ留意すべきなのは、このサイトに登録されているのは、公的施設が中心であり、民間が運営する有料老人ホームなどの施設情報は、都道府県によって大きく異なっているという点です。例えば、横浜市や川崎市では有料老人ホームが155施設、180施設登録されていますが、東京都ではほとんど登録されていません。行政によって、施設登録に積極的な市区町村とそうでないところがあるためでしょうか。公的施設については網羅的である一方、有料老人ホームなど民間施設については情報が少ないところが残念なところです。
③介護施設の第三者評価サイト
以上紹介した民間、公的検索サイトは、どこに、どのような介護事業所、老人ホームがあるのか、またそれらの施設の室数、スタッフ数、対応サービス内容はどうなのかなど、基本的なスペック情報は概ね網羅されているといえます。
ただ一方で、提供される介護サービスの質はどうか、スタッフの数は充足しているのか、最近問題となっている施設内の事故状況はどうかといった、利用者が最も知りたいと思う情報についての言及はありません。
介護施設を質的に評価した情報としては、「福祉サービス第三者評価」があります。これは社会福祉法第78条にある「福祉サービスの質の向上のための措置等」に基づいて2004年に導入されたもので、高齢者関係施設では、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームなどが評価対象となっています。受審結果については、WAM NET(ワムネット)の福祉サービス評価情報から検索閲覧することができます。
(https://www.wam.go.jp/wamappl/hyoka/hyokasrch.nsf/ptop)
第三者評価における評価内容としては、施設の「理念・基本方針」や「経営状況の把握」、「組織の運営管理」「適切な福祉サービスの実施内容」など、経営から運営の実際に関して60項目以上にわたって評価が行われ、評価が高い点や改善が求められる点などが記されています。現在のところ、介護施設の内容評価という点においては、この第三者評価が最も詳細な内容評価を行なっているものと言えるでしょう。
しかし、問題点がないわけではありません。一番大きな問題は、評価受審は高齢者介護分野では、施設の任意受審となっているため、全ての施設が評価を受けているわけではありません。受審に対して、積極的な自治体とそうでない自治体の差が大きいところも問題です。
図表2は、2020年4月から2026年3月までの特別養護老人ホームの延べ受審施設数を県別に見たものです。(上位10県のランキング)東京都が延べ565施設と件数としてトップで、以下大阪府、神奈川県、広島県と続きますが、大きく離れています。受審件数がゼロの県も多く、この期間の全国の受審件数は869施設です。特別養護老人ホームの施設数は、日本全体で約10,606施設(2023年度末)ですから、受審率はわずか8%に過ぎません。第三者評価を起点に施設の質を確認しようとしても、受審施設数の少なさがネックとなり、判断材料としてもあまり役に立たないのが実情でしょう。特別養護老人ホーム以外にも、介護老人保険施設や有料老人ホームが第三者評価を受審しているケースもありますが、その数も微々たるものです。
図表2 特別養護老人ホームの第三者評価受審件数

※2020年4月から2026年3月までの延べ件数 出典:WAM NET
求められる介護施設の質的評価
このように見てくると、現在のところ老人ホーム・介護施設の実態、サービス内容を調べようとしても信頼に足る情報源は限られているということがわかります。
今回紹介したそれぞれのサイトも一長一短があり、それを理解した上で使うことが求められます。
老人ホームや老人介護施設は、身体や認知に困難を抱える高齢者が生活を委ねる場所と言っていいでしょう。それだけに施設選びの際には、その施設が家族を預けるに足る信用があるかどうか、情報を得たいと考えるのが普通でしょう。にもかかわらず、なかなか施設の実態は見えてこない。
介護業界が人手不足に悩むと言われる中で、適切な人員配置が本当になされているのか。転倒や事故は起きていないか。虐待や暴行が疑われる行為は、この施設ではなされていないか。事故防止のためのリスクマネジメント対策やアセスメントはきちんとなされているか。
こうした情報を本来、それぞれの施設は積極的に公開すべきでしょう。また、行政はこうした情報公開をそれぞれの施設に義務付ける必要があるのではないでしょうか。
高齢化率が3割を超す日本社会の中で、老人ホームや老人介護施設の存在はなくてはならない重要な存在になっています。しかし、それぞれの施設の内容は利用してみないとわからない、こうした情報の非対称性は早急に解消すべき問題であり、積極的な情報公開が求められています。

