高齢者が暮らしやすい県はどこか、高齢者夫婦の年間収入から調べてみた

65歳を過ぎると、定年を迎えてリタイア生活に入る人が増えます。企業を退職した後は、公的年金が生活を支える主な収入源になるでしょう。一方、働き続けて年金に加えて収入を得る人、預貯金を切り崩したり、投資の配当金を生活費に充てたりする人もいます。

では、高齢者は実際にどのくらいの収入を、どのような形で得ているのでしょうか。「全国家計構造調査 都道府県」(2019年)のデータを用いて調べました。今回は、高齢者世帯のうち「高齢者夫婦のみの世帯」(夫婦のみで構成され、夫が65歳以上、妻が60歳以上の世帯)を対象としました。

高齢者夫婦の平均年収は383万円

まず、「高齢者夫婦のみの世帯」の収入全体についてです。都道府県別の年間収入の単純平均は3,835千円です。最も高いのは東京都(4,631千円)、次いで京都府(4,527千円)、神奈川県(4,449千円)と、大都市の県が上位に入っています。さらに、富山県(4,383千円)、千葉県(4,349千円)、岡山県(4,319千円)、福井県(4,309千円)が続きます。一方、下位には鹿児島県(3,427千円)、秋田県(3,347千円)、北海道(3,348千円)などが並び、上位県と下位県の差は100万円以上あります。

高齢者夫婦のみの世帯の年間収入 ランキング(単位:千円)

高齢者の収入の7割は年金収入

では、なぜこれほど県別に収入金額に差があるのでしょうか。内訳を見ながら確認していきます。家計構造調査では、収入を次の中項目に分類しています。

・勤め先収入

・事業・内職収入

・利子・配当金

・公的年金・恩給給付

・社会保障給付(公的年金・恩給以外)

・企業年金・個人年金給付

・仕送り金

・その他の収入

・現物収入

65歳を過ぎて年金生活に入っても、働き続ける人が多ければ「勤め先収入」は増えます。また、預貯金や株式を保有していれば、「利子・配当金」も高くなります。「事業・内職収入」には、農林漁業による収入のほか、事業収入、家賃・地代収入も含まれます。

先ほど、年間収入の単純平均は3,835千円と述べました。その内訳は次のとおりです。

高齢者夫婦のみの世帯の年間収入内訳(全国平均)(単位:千円)

高齢者夫婦の収入の中心は、やはり「公的年金・恩給」で、収入全体の約7割を占めています。公的年金以外では、勤め先収入(437千円)、企業年金・個人年金給付(291千円)、事業・内職収入(275千円)が主な収入源です。つまり、これらの金額の違いが、収入全体の差を左右しているといえます。

主要項目別に金額の高い県を見る

次に、主要項目ごとに金額の高い県を見ていきます。

公的年金額が高い県 (千円)

公的年金額が高い県は、広島県、福井県、茨城県などです。公的年金の受給額は現役時代の収入に左右されるため、大企業が多い都市部の県で高くなる傾向があります。また、公務員はかつての共済年金や退職金が比較的手厚かったため、年金収入が高くなる傾向もあります。このランキングには、そうした要因が反映されているのかもしれません。

勤め先収入が高い県 (千円)

勤め先収入が高い県は、京都府、岡山県、富山県、千葉県などです。最も高い京都府では、年間100万円を超えています。意外な結果だったため、高齢期の就業率との関係を調べました。しかし、65〜69歳の就業率では、福井県、山梨県、長野県、佐賀県が上位に並んでおり、直接的な関係は薄そうです。高齢期の雇用継続率などが影響している可能性はありますが、詳しい分析が必要です。

企業年金・個人年金給付が高い県 (千円)

企業年金・個人年金給付が高い県は、三重県、東京都、奈良県、兵庫県などです。全体として、都市部の県が高い傾向にあります。企業年金の金額はおおむね企業規模に比例するため、納得しやすい結果といえるでしょう。一方、個人年金の金額は、現役時代からの老後への備え方と関係していると考えられます。

個人年金額だけを見ると、岡山県、富山県、石川県、三重県などが上位に入っています。質素倹約を大切にする県民性が関係している可能性もあります。

事業・内職収入が高い県 (千円)

事業・内職収入が高い県は、東京都、福井県、沖縄県などです。この項目には事業や内職による収入が含まれますが、内訳を見ると、最も大きいのは家賃・地代収入です。つまり、借地、駐車場、アパート経営などからの収入が高い県が上位に入っているといえます。

このように、高齢者の収入は公的年金が大きな割合を占める一方、個人年金や企業年金、就労収入、家賃・地代収入など、複数の収入源で成り立っています。その中には、親から受け継いだ不動産などの資産による収入もあれば、若い頃から備えてきた個人年金のような収入もあります。高齢期の生活を支える収入を考える際には、こうした要素を早めに見通しておくことが大切です。

最後に、年間収入が高い上位10県の収入内訳を下表に示します。高齢者の収入は、内訳を見ると県によって大きく異なることが分かります。全県の収入内訳リストも別コラムからご覧ください。

高齢者夫婦のみの世帯の年間収入内訳(単位:千円)