Surfvoteイシュー:「複雑すぎないか?老人ホーム(居住・介護施設)の名称」
9月5日 Surfvoteイシュー:「複雑すぎないか?老人ホーム(居住・介護施設)の名称」寄稿しました。
終末期を送る場所として高まる「老人ホーム」の重要性
多くの人々が理想的と考える亡くなり方は、自宅で、愛する妻や子供たち、知り合いの人々に見守られて穏やかに亡くなっていくことでしょう。
しかし、実際はなかなかそういう形にはならないのが実情です。
現在、多くの人々が亡くなる場所は「自宅」ではなく「病院」です。
令和5年厚生統計要覧によると、64.5%の人が「病院」で死期を迎え、次いで「自宅」が17.4%、そして「老人ホーム」が、11.0%、「介護医療院・老人健康保険施設」が3.9%となっています。
近年の傾向として、「病院」での死亡は低下傾向にあり、逆に「自宅」や「老人ホーム」での死亡が増加しています。
「病院」での死亡低下は、おそらく2000年の介護保険導入以来、在宅ケアを可能とする「地域包括ケア」の広がりの結果でしょう。
また「老人ホーム」での死亡増加も同じく、各種老人ホーム施設の充実によるものでしょう。
その意味では、高齢期を過ごす場所として「老人ホーム」の重要度は増しているわけです。
図表1は、さまざまなタイプの老人ホーム(居住・介護施設)の名称と施設数、利用者数(正確には定員数)を示したものとなります。
利用者数計は、約216万(床)となり、これは令和6年時点の75歳以上高齢者数1997万人の10.8%にあたります。
75歳以上高齢者の約1割は、老人ホーム(居住・介護施設)で生活しているのです。
(図表1)
出典:「高齢者向け住まいの今後の方向性と 紹介事業者の役割」
厚生労働省 老健局 高齢者支援課資料より作成
(データは令和1年のもの(一部例外あり))
が、ここで問題としたいのは、その名称の分かりづらさです。
複雑な老人ホーム(居住・介護施設)の名称
具体的にそれらの名称を列挙してみましょう。
・介護老人福祉施設
・有料老人ホーム
・介護老人保険施設
・サービス付き高齢者向け住宅
・認知症高齢者グループホーム
・軽費老人ホーム
・養護老人ホーム
・介護療養型医療施設
・介護医療院
これ以外にも、近年は、「シニア向け分譲マンション」も登場しており、さらに複雑さを増しています。
福祉業界の関係者以外で、これらの施設の提供サービスの違いがきちんと理解できる人はいないのではないでしょうか。
施設名称とそれぞれの根拠法
これら施設名称は、それぞれの施設が登場してきた時代背景が異なる中で、その目的と役割、名称が与えられてきました。
よって施設の成立根拠法も異なります。
それぞれの施設の根拠法は以下のとおりです。
・「介護老人福祉施設」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」「認知症高齢者グループホーム」:老人福祉法
・「介護老人保険施設」:介護保険法
・「介護療養型医療施設」:医療法、介護保険法
・「介護医療院」:介護保険法
・「サービス付き高齢者住宅」:高齢者の居住の安定確保に関する法律
このように、高齢者向けの老人ホーム(居住・介護施設)として同じジャンルに属する施設のように見えながらも、それぞれの施設根拠法はバラバラであり、結果として老人ホーム(居住・介護施設)全体像が分かりづらくなっています。
施設によって、健常者向けのもの、要介護度や病状による受け入れ、利用金額、などに差があり、簡単に理解できるものではありません。
この分かりづらさを既知のものとして受け入れ続けておくことは、今後さらに高齢者の介護利用ニーズが増加する中で望ましい事ではありません。
利用者本位の名称案の必要性はないか
両親や配偶者の介護ニーズが訪れるのは突然のことです。
施設内容がよくわからないまま選んでしまったというのはよく聞く話です。
施設内容の理解度を高めるためにも、よりわかりやすい名称にすべきではないでしょうか。
こうした施設名称を解説するホームページも数多く見受けられますが、多くは民間事業者によるもので、場合によっては中立性に欠ける(自社施設へ誘導する)サイトも見受けられます。
より利用者本位の視点に立った名称変更が検討されるべきではないでしょうか。
(下記は変更名称案の一案となります。)
<生活困窮型老人ホーム>←養護老人ホーム
<低介護・自立型老人ホーム>←軽費老人ホーム
<要介護対応(軽度)医療施設>←介護老人保険施設
<要介護対応(重度)居住施設>←特別養護老人ホーム
<医療提供型介護施設>←療養医療施設・介護医療院
<認知症型共同住宅>←グループホーム
<民間有料老人ホーム(健康型・住宅型・介護型)>←有料老人ホーム
<高齢者向け住宅(住宅型・介護型)>←サービス付き高齢者向け住宅
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