Sorfvoteイシュー:「130万の壁」第3号被保険者制度の見直しは必要?

10月9日:Surfvoteイシュー「「130万の壁」第3号被保険者制度の見直しは必要?」寄稿しました。

第3号被保険者制度とは

最近、第3号被保険者制度に関する見直し議論が活発化しています。
国民年金のひとつである第3号被保険者制度とは、会社員や公務員など第2号被保険者の配偶者は年金保険料を支払わなくても基礎年金を受け取れる制度のことで、条件としては厚生年金保険被保険者の配偶者であること、20歳以上60歳未満であること、年収は130万円に達しないことなどが挙げられます。
もともとこの第3号被保険者制度が創設されたのは、1985年(昭和60年)の改正においてで、それ以前の配偶者の国民年金は任意加入であったため、場合によっては将来無年金となる可能性がありました。そうした事態を避けるためにも新たに第3号被保険者制度を創設し、強制加入としたのです。

高まる第3号被保険者の見直し機運

現在こうした制度に対して見直すべきだとの声が高まってきています。
その理由は、大きく以下の2点です。
ひとつは、共稼ぎ夫婦と比較すると、専業主婦に有利な保険制度ではないかというものです。
専業主婦らが保険料を負担担しないで年金をもらえるのは不公平であるとの声です。

かつては結婚・出産を機に女性は専業主婦化し、無職となっていました。
そうしたことから第3号被保険者制度が創設されてわけですが、以前は低下していた女性の労働力率は、この30年で上昇しており、制度創設当時(昭和60年)約50%であった30-34歳女性の労働力率は、現在8割程度まで上昇しています。
専業主婦世帯数と共働き世帯数を比較すると、1990年前後に共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回り、2022年時点では専業主婦世帯数430万世帯に対して、共働き世帯数が1191万世帯と3倍近い開きがあります。

そしてもうひとつは、加入条件の130万円未満が働くことに対する抑制として働き、人手不足の要因になっていないかというものです。
また、この非課税枠の壁が、日本の非正規雇用者増加の一因になっているとの声もあります。(近年、政府は最低賃金が引き上げられている経緯も踏まえ、130万を超えても2年は扶養に留まれる暫定措置を打ち出しました。)
専業主婦に対する保険者制度は、唯一この日本の制度のみであり、他の先進国には見られません。
世帯構造の変化、就労構造の変化に合わせて、保険制度も見直すべきではないかという意見が、変えるべきだという意見の根底にあります。

【世帯構成の推移と見通し】

第3号被保険者制度について P.36
(厚生労働省 年金局、第15回社会保障審議会年金部会 2024年5月13日)

安易に変更すべきではないとの声も

一方で、第3号被保険者制度の廃止もしくは縮小に対し批判的な声もあります。
もし、無職もしくは非正規雇用で低賃金の雇用者が保険料を自己負担とするとなると支払いが不能な保険者が出てくることを懸念する声です。
例えば、第3号被保険者制度廃止により保険料を自己負担するとなると、基礎年金部分の保険料と同額ですから、月額で16980円、年間にすると20万円の支払いとなります。
年収を130万円以内に抑えて働いている人にとっては実質20万の収入減となります。

特に出産、子育てや介護で就労が不可能なときにどうするのか、支払い免除されたとしても、実質の年金額が減額されれば、将来の生活に響くことになります。

ドイツやフランスなど欧州各国では、出産や育児の期間について保険料を納付した期間とみなすことで給付を保障する例もあるようです。

【諸外国における無収入の配偶者の取り扱い】

第3号被保険者制度について P.8
(厚生労働省 年金局、第15回社会保障審議会年金部会 2024年5月13日)

みなさんは、第3号被保険者制度の見直しは必要だと思いますか?

参考にした資料

第3号被保険者制度について(PDF)(厚生労働省 年金局、第15回社会保障審議会年金部会 2024年5月13日)

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