Surfvoteイシュー:「高齢者は何歳まで運転可能とすべきか?」
2023/11/29 Surfvoteイシュー:「高齢者は何歳まで運転可能とすべきか?」を寄稿いたしました。
近年、高齢ドライバーによる運転事故増加が社会問題化している。
平成31年に東京・池袋で起きた高齢ドライバーによる母子死傷事故は記憶に新しい。
高齢ドライバーによる運転事故、アクセルとブレーキの踏み間違い、高速道路の逆走事故などをニュースとして目にする機会が増えている。
高齢者の運転事故要因
高齢者による運転事故数の増加は、単純に高齢者の運転免許保有者数が増加したためである。
令和4年時点(PDF)の65歳以上運転免許保有者数は、1,946万人と全保有者数の23.8%を占めている(運転免許統計)平成14年の65歳以上運転免許保有者数は826万人であったから、約20年の間に高齢ドライバーの数は2.3倍に増加した。
高齢者による運転事故を、公益財団法人交通事故総合分析センターの統計資料から読み解いてみる。
2022年の全事故件数30万839件に対し、75歳以上の事故件数2万9,320件と事故件数の約1割を占める。
高齢者による事故が突出しているわけではない。
しかし、死亡事故で見た場合、免許保有者10万人あたりの事故件数は、85歳以上で10.31件と16〜19歳の事故件数(10.04件)よりも高く、死亡事故の発生確率は、75歳以上から上昇する傾向が窺える。
事故の中でも「ブレーキとアクセルの踏み間違い」は、全事故件数の約4分の1を70〜90代が占めている。
認知機能の低下による瞬時の判断の修正の遅れがこうした事故を引き起こしているのであろう。
また、「高速道路上の事故、逆走事故件数」を見ても、高速道路上の事故での75歳以上の割合は概ね2%に対して、逆走事故のそれは一気に2割から3割に上がることから、高齢に伴う認知機能の低下が、逆走を引き起こす要因であることがわかる。
高齢者への運転対策① 運転技能検査、認知機能検査の導入
こうした高齢者の事故件数の増加に伴い、国はさまざまな規制を講じてきている。
ひとつは、免許更新時における高齢者に対する講習会や技能検査の実施である。
後期高齢者(75歳以上)は、運転免許更新時に、高齢者講習に加え、2009年から認知機能検査、2022年からは運転技能検査を受けることが必須となった。
この検査に一定期間内に合格することが免許更新の条件であるが、平均合格率は約90%(2022年5〜12月)だが、県によって合格率に大きな差があることも報告されている。
最も合格率が高い山梨県(98.5%)に対し、島根県は72.1%と大きな差が生じていることが公平性の面から問題となっている。
高齢者への運転対策② 免許自主返納の促進、サポカー限定免許
国は高齢ドライバーに運転免許の自主返納を呼びかけている。
しかし自主返納の件数も令和元年の60万件をピークに伸び悩んでおり、令和3年で52万件、同4年で45万件と返納件数は近年漸減傾向にある。
2022年5月の改正道路交通法施行で、自動安全ブレーキ機能などを備えたサポカー限定免許が導入された。
希望者は普通免許から限定免許に切り替えることができるようになったが、限定免許の取得者は22年末で全国わずか14人にとどまっており、効果的施策とは言い難い状態である。
免許返納がもたらす日常の不便
高齢者による運転リスクが社会的注目を浴びる一方で、地域過疎化による鉄道やバス路線の廃止、ドライバー不足などを遠因として、運転免許を返納すると店舗まで赴く手段がなくなり、買い物難民となる地域が多数存在している。
こうした状況に対し、自治体によっては、住民のマイカーに高齢者が実費程度で相乗りするライドシェア、タクシーの割引制度、デマンド交通の導入などの手段を講じている地区もあるが、十分な対策になっているとは言い難い。
自動運転への期待はあるが、これもまだ実用化には至っていない。
高齢化に伴う「運転安全性の低下」、「他人へ危害を及ぼしてしまう可能性」と、「運転断念によるに日常生活への支障」。
この2つの狭間で、高齢者の運転問題は現在揺れ動いている。
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