アクティブシニアに人気の移住県ベスト5を調べてみた 住宅資産売却によるダウンサイジング移住が加速

高齢になり、定年やリタイアをきっかけとして、今まで住み続けた場所から新しい都市や田舎に移住したいと考える人は一定程度いるでしょう。都会の喧騒から一定の距離を置いて田舎暮らしをしてみたい、海の見えるリゾートで暮らしたい。もしくは、地方でほどよく都市機能を備えた街に暮らしたいという方も多いでしょう。

コロナを機に、都会の稠密な環境から一定の距離を置きたいと考える人も増えました。東京都心の住宅価格の高騰を受け、売却して田舎暮らしを考える人も多いようです。

では、そのような夢を持ち、実際に移住したアクティブ・シニア※の人たちは、実際にどの街に移住しているのかを2025年の住民基本台帳人口を使い市町村単位で調べ、上位100市町村を抽出。最終的に県別のベスト5ランキングとしました。ランキングの具体的方法については、本文末の注釈をご参照ください。

また、ここではアクティブシニアの定義を60歳から74歳までの年齢の人々としています。60歳から74歳までは高齢者でも比較的健康であり、自分の意思で居住地を含む今後のライフスタイルが決定可能です。しかし、75歳(後期高齢期)になると要介護となる確率も高くなり、移住(住居移転)に関して自己の意思というよりも、介護による施設入居、子供が両親を近くに呼び寄せるといった別の移住理由が発生する可能性が高いためです。

第1位 長野県 適度な都会感と自然が混在する避暑地リゾート

 アクティブシニアが移住する移住先のベスト1県は長野県でした。今回調査したベスト100市区町村の中に、長野県は13市町村ランクインしています。

具体的には、小川村(3位)、原村(4位)、軽井沢町(7位)、御代田町(12位)、長和町(22位)、木島平村(35位)、阿南町(37位)、安曇野市(41位)、小諸市(46位)、飯島町(51位)、富士見町(67位)、佐久市(83位)、池田町(98位)と数多くの市町村が入り、2025年には合計で514名の方が、これらエリアに移住しています。(ここでは、転出転入後の差引人数を移住人口としました)超過人数では、安曇野市121人、佐久市92人、小諸市64人、軽井沢町60人などが上位に並んでいます。

これら地域に移住しているのは、主に首都圏エリアのシニアです。例えば、安曇野市や佐久市。小諸市、軽井沢町、原村への移住者は、東京都、神奈川県、埼玉県居住者が多いことが住民基本台帳の移動前住所から確認することができます。

猛暑が続き、ヒートアイランド化した東京から逃れ、涼を求め移住したいというニーズが、標高が高く夏は涼しい八ヶ岳山麓、浅間山麓、北アルプス山麓などがある長野県各地への移住を加速していると考えられます。古くからの避暑地リゾートであるというブランド的な人気もその背景にはあるでしょう。これらの多くの地区は、東京から新幹線や高速道路で2~3時間圏にあり、田舎暮らしをしていても、簡単に都市部の文化的資産にアクセスすることが可能なエリアであると言えます。

軽井沢町、佐久市、小諸市、安曇野市、御代田町などは、スーパーや病院、金融機関などがあり、公共交通機関もある田舎すぎない田舎です。

つまり、首都圏からの利便性も高く、適度に都会的で避暑地としての趣をもつ長野県に魅力を感じるシニアが多いということでしょう。加えて言うならば、長野県は現在日本で男女共に健康寿命が長い県であるというデータもあります。長野県が公表しているデータでは、女性は8年連続全国1位、男性は3年連続全国1位です。こうしたデータも、アクティブシニアの移住を促す一因になっているのではないでしょうか。

長野県でアクティブシニア移住度の高いエリア

第2位 北海道 利便性を求め北海道内の都市部へ移住

長野県のような都心部からの郊外移住ではなく、北海道のシニア移住は、北海道内の各地域から利便性を求めた都市部への移住です。

移住地としては、札幌市中央区(9位)、鹿部町(30位)、札幌市南区(40位)、札幌市豊平区(44位)などがランクインし、超過人数では、札幌市中央区(295人)、旭川市(211人)、函館市(186人)などが上位に上がっています。

例えば、60歳以上の札幌市中央区転入者の移動前住所を確認すると、同じ市内他区からの移住に加え、旭川市、函館市、小樽市、苫小牧市、岩見沢市などからの移住が人数的には多いものとなっています。

札幌市中央区、旭川市、函館市は、北海道内でも有数の医療集積地でもあります。高齢期における医療面での安心や、山間部や豪雪地域における雪害を避けるという側面も、こうした北海道内での都市部への移住の背景にはあるでしょう。

北海道でアクティブシニア移住度の高いエリア

第3位 千葉県 自然環境と住宅資産の住み替えによるダウンサイジング移住 

アクティブシニアの移住地第3位は千葉県でした。

移住地としては、長生村(24位)、御宿町(26位)、八千代市(48位)、印西市(61位)などが上位に上がりました。超過人数としては、八千代市(152人)、千葉市若葉区(122人)、印西市(109人)などが上位市です。

移住先としての千葉県の特徴としては、大きく2つのタイプに分けることができるでしょう。

ひとつは、長生村、御宿町、館山市、いすみ市、白子町などの海が近く気候が温暖な海浜リゾート系のエリアへの移住です。これら地区に移住するシニアは、海の自然を楽しみながら、サーフィンや釣り、家庭菜園などを楽しみたいという自然型ライフスタイル志向の人々と言えるでしょう。

そしてもうひとつは、千葉市内もしくは東京都内からの八千代市、印西市、栄町、千葉市若葉区などへの移住で、これは住宅資産の住み替えによるダウンサイジング移住というもの。近年東京都市部の地価上昇は著しく、長年所有していた戸建て住宅は大きく値上がりしています。そこでリタイアを機に、自宅を売却し、郊外の住宅を安価に入手し、売却差額を高齢期の生活資産に当てようと考える人が増えているのではないかと考えられます。

千葉県でアクティブシニア移住度の高いエリア

第4位 沖縄県 アクティブシニアの移住定番エリア 

沖縄県もアクティブシニアの移住地として以前から人気の高い県です。ランキング偏差値では、宜野座村(1位)、八重瀬町(17位)、南城市(20位)、うるま市(34位)などが上位に並びました。人数的には、うるま市(142人)、南城市(84人)、名護市(63人)が上位です。これらの市町村は、東京、神奈川、愛知など都市部からの移住が多いようです。温暖な気候の中で、ゆったりとした時間を過ごしたい人にとって魅力的な移住先であると言えるでしょう。

沖縄県でアクティブシニア移住度の高いエリア

第5位 東京都 住宅資産の住み替えによるダウンサイジング移住が顕著 

シニアの移住地として第5位にあがったのが東京都とは、ちょっとした驚きでもあります。しかし具体的な市区町村名を見ると納得できる部分があるかもしれません。

具体的にランキングにあがったのは、檜原村(2位)、奥多摩町(27位)、青梅市(42位)、東大和市(45位)、多摩市(58位)などで、多くは東京都西部の多摩地域エリアです。移住人数が多いのは、青梅市(152人)、多摩市(133人)、東大和市(97人)、清瀬市(79人)などです。

これら地域への移住理由として考えられるのが、先の千葉県と同じ「自然志向移住」と「住宅資産の住み替えによるダウンサイジング移住」です。

「檜原村」「奥多摩町」は自然豊かな東京の奥座敷とも言える地区であり、これらエリアへの移住は、森林的自然環境を望むゆえの移住と言えるでしょう。

一方、「青梅市」「東大和市」「多摩市」「清瀬市」「武蔵村山市」などへの移住は、住宅資産の住み替えによるダウンサイジング移住が中心でしょう。郊外への移住ではあるものの、買い物や医療、都心部へのアクセスなどの利便性は保持しておきたいと考える人たちにとっての移住先として、これらエリアが選べれています。

私の知り合いでも、このように考えて都心部から多摩地域に移住した人が何人かいます。都会の近隣で移住を果たしながら、住宅資産を活用した老後設計の事例として、千葉県やこの東京都の事例は注目されるべきかもしれません。

東京都でアクティブシニア移住度の高いエリア

移住ランキングの結果を見て

今回のランキング結果を見て、高齢期に移住する理由としては、大きく以下の3つのタイプが挙げられます。

ひとつ目は、自分が以前から憧れていたライフスタイルを実現したいという「ライフスタイル実現型」。憧れの軽井沢で別荘型の生活をしたい、千葉のいすみ市でサーフィンを楽しむために移住したい、沖縄で南国リゾート生活したいというのは、このタイプであると言えるでしょう。

そして2番目は、利便性を求めての「都市移住型」。ランキング2位の北海道は、多くがこのタイプでした。高齢期になると、雪や台風などの自然災害への対処力は弱くなりますし、人口過疎地に住んでいると、医療や買い物など日常生活で必要な機能へのアクセスが困難となる可能性があります。こうした事態に備えて、元気な内に移住しておこうというニーズも一定程度あるでしょう。

そして3番目は、東京や千葉にみられた都心部から、すこし離れた郊外に移住するという「住み替えによるダウンサイジング移住型」です。おそらく近年の傾向で最も特徴的なのが、このタイプと言えるでしょう。都心部の土地住宅価格が高騰する中で、その場所に住み続けることは利便性もあるものの、逆に固定資産税も高くなるだけで、資産の有効活用とも言えない、ならば価格の高いうちに売却し、郊外の安い家屋を購入し、購入差額を老後の生活費に当てよう。こう考える高齢者が増えるのは昨今の状況から言って当然の行動のようにも思えます。先の見えない未来に備え、自己防衛するシニアの姿が、移住ランキングから窺い知ることができました。

※ランキングの方法手順

①住民基本台帳人口移動報告転入超過数(2025年)から、アクティブシニアと想定した(60〜74歳)の超過数人口数を日本全国市町村別に抽出し、同じく市町村別国勢調査人口(2020年)で割ることで、アクティブシニア人口超過率を算出。

②各市町村別の60〜74歳人口超過数と人口超過率をそれぞれ偏差値化し、合計偏差値を算出。異常値を避けるため超過人口10人以下の市町村は削除。

③合計偏差値ランキングから上位100市町村を抽出。県別に該当市町村の偏差値を合計し、上位県からランキングした。