Surfvoteイシュー:「公的介護保険の地域格差は法の下の平等原則に反しないか?」
2024/01/17 Surfvoteイシュー「公的介護保険の地域格差は法の下の平等原則に反しないか?」を寄稿いたしました。記事内容は<こちら>から。
公的介護保険制度とは
公的介護保険(以下介護保険)は、加齢や障害などに起因して要介護状態になった際に所定の介護サービスが受けられる社会保険で、日本では高齢化が本格化した2000年から始められた。
介護保険は40歳以上に加入義務があり、65歳以上の人は「第1号被保険者」、40〜64歳の被保険者は「第2号被保険者」となり、第1号被保険者は要介護状態になった際に原因を問わず、第2号被保険者は加齢などに起因する特定の病気(16疾患)になった場合に介護サービスを受けることが可能となる。
値上げが続く介護保険料
介護保険サービスを受けるためには、毎月所定の保険料を支払う必要がある。
介護保険は3年ごとに制度を見直すことになっており、介護報酬、介護保険料の見直しなどが行われる。
平成12〜14年度を第1期として、現在は第8期(令和3年〜令和5年度)に当たるが、介護保険料はその度に値上がりが続けている。
第1期に2911円であった保険料は、その後、3,923円(第2期)、4,090円(第3期)、4,160円(第4期)、4,972円(第5期)、5,514円(第6期)、5,869円(第7期)、6,014円(第8期)と値上げを続け、発足当初の保険料のほぼ2倍の保険料となっている。
ただし、上記金額は全国保険金額の加重平均値であり、介護保険の運営主体は「市町村」であるという実情に鑑み、実際の保険金額は、それぞれの市町村の介護保険サービスに関わる実情や、被保険者の所得金額(市町村民税課税、非課税、所得金額別)によって細かく分かれている。
介護保険料の地域格差
現在の介護保険料(第8期)の平均基準額は6,014円だが、実際は地区町村によってその金額は大きく異なっており、
高額市区町村としては、
東京都 青ヶ島村 9,800円
秋田県 五条目町 8,300円
福島県 葛尾村 8,200円
岩手県 西和賀町 8,100円
大阪府 大阪市 8,094円
福島県 三島町 8,000円
などが月額8千円を超える市区町村で、
一方の低額市区町村としては、
北海道 音威子符村 3,300円
群馬県 草津町 3,300円
東京都 小笠原村 3,374円
宮城県 大河原町 3,800円
埼玉県 鳩山町 3,800円
千葉県 酒々井町 3,900円
が軒並み月額4千円以下の保険料となっている。
基本的には同一の介護サービスが提供されるという前提で、居住する地域によって負担保険料が3倍近く異なるというのは、法の下の平等という視点からも逸脱しているのではないかとも考えられる。
介護保険料負担を下げるためには、各自治体に介護予防の推進などにより要介護者数を下げる努力などが求められるが、今後団塊世代が後期高齢期(75歳以上)を迎えることもあり、そうした試みが実際の保険料低減につながるかはいささか不透明でもある。
また、値上げが続く介護保険料を滞納し、差し押さえ処分を受ける高齢者も増加し、2021年度には2万人の高齢者が資産の差し押さえ処分を受けていることも併せて付記しておきたい。
多くの国民を対象とした保険制度という意味では、介護保険は医療保険制度と双璧をなすものですが、応能負担(所得に応じた負担)に加え、地域負担格差がの存在が介護保険制度を不透明なものとしている。